Film,  ラ・コシーナ/厨房

『ラ・コシーナ/厨房』人種・格差社会・不条理・金…厨房は世界の縮図だ!


カオス!カオス!カオス!NYにある大型レストランの厨房は混沌としているわ。


3分で新作映画紹介動画はこちら↓ ↓


人種のるつぼで、調理人やウエイトレスはほぼ移民。

英語よりスペイン語が飛び交うくらいなの。

路地裏から薄暗い廊下を曲がりくねった先にある調理場は、

まるで移民たちが辿ってきた道を象徴しているかのよう。

そんなカオスなレストランの1日を描いたのがこの作品。



© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023


主人公のペドロはメキシコ出身。

料理の腕はいいんだけど喧嘩っ早いトラブルメーカー。

そこへ持ってきてアメリカンドリームを信じている夢想家だったりする。

そのペドロには、アメリカ人ウエイトレスの恋人ジュリアがいる。

彼女、ちょっと訳ありっぽくてミステリアス。

二人の間には未来への温度差が確実にある状況。


© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023



ペドロたち移民の調理人が渇望しているのはアメリカのビザ。

「手を貸すぞ」とオーナーは声をかけるけど、それは口先だけのこと。

開きっぱなしの格差社会、埋まらないアメリカ人と移民の溝、移民たちがみる夢と現実のギャップ。

扉の向こうは観光客で賑わっているけど、その裏側ではドロドロした感情が渦巻いている。

煩雑な調理場はいわば世界の縮図。



© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023


そんな超ブラックな仕事場で、なんと売上金の一部が無くなるというトラブルが発生。

従業員全員に容疑がかけられるのね。

もちろんペドロにも。

売上金を盗んだのは誰?

ペドロとジュリアの恋はどうなる?

問題山積で大忙しのレストランは無事回転するの?



© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023



まぁ、よくできた話だこと!って思ったら原作が名戯曲だったのよ。

イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた、1959年初演の「調理場」。

世界中で、そして日本でも幾度か上演されている。

原作の舞台はロンドンで、主人公はドイツ人っていう設定。

それを今作では、NYの観光客向け大型レストランにして、

メキシコ人を筆頭にした移民たちの話に仕立て上げている。



© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023


メガホンをとったのは、メキシコの新進気鋭、アロンソ・ルイスパラシオス監督。

主人公ペドロを演じたのは、「The Hollywood Reporter が選ぶ2024年ベストパフォーマンス俳優」に選ばれたラウル・ブリオネス。

その恋人ジュリアに扮したのは、演技派ルーニー・マーラ。

なんじゃこの顔ぶれ!才能の三重奏。

名作の匂いしかしなかったわ。


© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023



予感はビンゴ。美味しゅうございました!

全編モノクロの映像は小粋。

所々つけられる背景の色とかが絶妙で、揺れ動くペドロとジュリアの感情を醸し出している。

何人いるのよ⁉︎っていうくらいキャストが登場するけど、みんなキャラが際立っていて面白い。

舞台には舞台の良さがあると思うんだけど、

この「ラ・コシーナ/厨房」は映画にしかできない表現方法をとっていて秀逸。



© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

例えば、料理するときの素材のグロテスクなアップだったり、無音でみせる主人公たちの目線だったり。

息遣いが感じられる作品だと思ったわ。

圧巻なのは、14分間ノーカットの調理場の混乱を描いたシーン。


© COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023



猥雑な会話の応酬に、乱闘寸前の言い争い。

コックとウエイトレスは小競り合い。

壊れたディスペンサーからはチェリーコークが流れ続けて床上浸水。

従業員たちのストレスは沸騰寸前!

そんなヒリヒリする臨場感が半端ない。

ぐんぐん引き込まれるのよ。



終盤でブチ切れたペドロが叫ぶの「メキシコ移民をバカにするな!」って。

耳が痛い大統領、今いるんじゃない?アメリカには。

3分で新作映画紹介はこちら⇧⇧⇧




監督・脚本:アロンソ・ルイスパラシオス

原作:アーノルド・ウェスカー「調理場」(晶文社刊「ウェスカー全作品2」に収録)

製作:ラミロ・ルイス、ヘラルド・ガティカ、アロンソ・ルイスパラシオス、ローレン・マン、アイヴァン・オーリック

撮影:フアン・パブロ・ラミレス

出演:ラウル・ブリオネス、ルーニー・マーラ、アンナ・ディアス、モーテル・フォスター、エドゥアルド・オルモス

2024年|139分|モノクロ|スタンダード(一部ビスタ)|アメリカ・メキシコ|英語、スペイン語|5.1ch|G|原題:La Cocina |字幕翻訳:橋本裕充

配給:SUNDAE  © COPYRIGHT ZONA CERO CINE 2023

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