「燃えたよ…。まっ白に…燃えつきた…。まっ白な灰に…。」
矢吹丈は、試合終了のゴングが鳴った後、リングコーナーに戻る際そう言った。
そしてあの印象的なまっ白のイラスト。
『明日のジョー』ラスト、矢吹丈の生死は色々議論された。
結果、『明日の』ジョーである限り矢吹は生きている、というのが希望的な結論らしい。
灰になっても明日はあるんだ。
遅咲き人生にも勿論。
あるんです。
44歳で2児の母となった私は気が狂った。
なんせ今まで、自由気ままに生きてきたのが一変、幼児2人の面倒をみながらの生活に変容したのだ。
毎日が灰になる気分だった。
そして不思議なことに、長男の産休明けと同時にそれまで細々と続いていたモノ書きの仕事がパタりとなくなった。
連載という連載が終了した。
web誌面自体がなくなって強制終了、あるいは予算削減でお疲れ様。担当者が変わって…。
事情は違えど、とにかく全部吹っ飛んだのだ。
幼な子2人を抱えまたもや無職。
2歳と0歳児がいてフルタイムの正社員など応募は不可能に近い。
ダーリンがいなかったら私は路頭に迷っていただろう。
専業主婦を否定する気はサラサラない。
ただ私は精神的に、できれば経済的にも自立した女性でいたいのだ。
それが全く叶わない現実に苛立っていた。
ふとfacebookを見ると、同じように妊活を経て2児を得たT V局時代の先輩女性プロデューサーの笑顔があった。
もはや出世して雲の上の人だ。
会社員生活を続けながらの子育てはきっと大変だと思う。
だけど、先輩にはそれ相応、人生を賭けるに値する仕事がある。
それが今、私にはない。
ただ、目の前の2つの命を必死に守る。
それしか、できない…。
子育てしながら続けられると始めたモノ書きの仕事だったのに。
需要がなきゃ意味がない。
遅咲きさんは、無い物ねだりさんだったりします。
もう一杯一杯のクセに。
まだ欲しがるのだ。
「あぁ。これで私の人生、本当に試合終了か…。」
遅咲きどころか、人生、何だったんだろう。
スローでブギなだけで終わっちまったな…。
私は、ミルクとおむつ替えとお風呂入れだけの日々に絶望した。
あれほど妊活して切望した子供だったけれど、子育てがこれほど壮絶だったとは想定外だった。
なんせ子供のこと以外、何一つ自分の事ができないのだ。
トイレだって扉を開けたままおしっこした。
お風呂になんて入れない。
ノイローゼになった。
髪の毛がごっそり抜けた。
白髪が一気に増えた。
泣きながら冷めたごはんを食べた。
でも待って!!!
私、灰になる前に思いっきり「まっ赤に燃え上がった」?
「まっ白な灰だけが残る。燃えかすなんか残りやしない。まっ白な灰だけ」に。
それは、矢吹丈が熱く語った「灰になる」の定義!!
今の私は、ただ子育てに疲れて灰になっているだけ。
「まぶしいほどまっ赤に燃え上がって」ない!!
TV局にいた頃は確かにあった「いっときだけど、まっ赤に燃え上がる瞬間が」。
でも、私はそれに満足せずブギを繰り返してきたんだ。
「もっと。もっと。」って。
私の中にはまだ燃えかすが残っている。
燻っている。
まだ足りないんだよ。
ここで試合終了にはしたくない。
そうだ。
愚痴だらけの日々をリッチな日々に変えよう。
そう思って始めたのはブログだった。
日々の小さな気づきを、勇気づけに。
一つひとつ拾うように私はまた書きはじめた。
45歳で子供が幼稚園に入ったのをきっかけにやっとママ友作りをはじめ、(ハイ、スローです)
49歳の時、こともあろうか園児214名の幼稚園の役員会である母の会会長を務めるまでに至った。
人生の歯車がまた回り始めた気がした。
そして2021年、私はサイトを創ってみた。
御年50歳。
もはや会社組織などに魅力は感じない。
発信したいことがあるなら自分でその場所を作ればいい。
そう思い立った。
自分が思い描いていた50歳なんて、早々にリタイヤして寺巡りでもしている御身分だったけど、どうやらムリらしい。
私が歩んできたスローでブギな人生を振り返って、これからまたまっ赤に燃え上がる瞬間までの軌跡を残そう。
そんな遅咲き人生応援サイトを作ろう。
それが、【遅咲きGIRL】という名のサイトだった。
同じように遅咲きを憂いている人がいるなら、遅すぎることなんてない!と。
背中を押そう。
(もしかしたら私自身はあまりの遅咲きで、ホントの灰になる方が早いかもしれないが)
さらに、そのサイトを2023年2月にリニューアル。
自分の専門の映画に特化。
【映画が私の人生にくれたもの】とした。
カンヌ映画祭でグランプリを獲得した映画監督へのインタビュー動画でスタートした。
3分で新作映画紹介という動画とともにコラムを重ねた。
「スローでブギな人生考」は、前サイトからの連載。
新たなサイトでも、映画コラムだけでなく、たまにこのような人生コラムを発信したい。
そう思っている。
読んでくださる方が、人生一瞬でもまっ赤に燃え上がる体験をしてハイになっていただけたら!
あなたにも私にも、「まだ帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない。わかってくれるよね?」 (アレこの名言は…)
スローでブギな人生考〜アタシの場合~ END
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