aka.The Hangover Part II, ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える
『ハングオーバー! 2』は偉大なるマンネリか、
横柄な焼き直しか!?批評家と観客の評価が真っ向対立!!
コメディ映画として、史上最高の初動興収記録を打ち立てた
『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』。
昨年全世界でヒットした『ハングオーバー! 』のパート2だ。
しかし、ボックス・オフィスの功績とは裏腹に、
批評家たちからは、「続編というより焼き直し」など散々なコメントが並んでいる。
コメディ映画の記録を塗り替えたヒット作続編の評価は、どっちが本当なのだろうか!?
結婚式前夜、ラスベガスで男だけのバチュラー・パーティを楽しんだところ、翌朝とんでもない事態に。
行方不明になった花婿を探すと、泥酔の果てにしでかした数々の醜態が明らかになっていく。
シリーズ第1弾『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』は、
全米でコメディ映画史上最高の興収を記録し、
ゴールデングローブ賞/ミュージカル・コメディ部門の作品賞まで獲得した怪作だ。
第2弾の『—国境を越える』では、舞台をバンコクへ移し、
やはり結婚式前のバチュラー・パーティで、同じヘマをしてしまった男たちの、
さらにスケールアップしたドタバタが繰り広げられている。
とにかく始まりから終わりまで、
「悪夢再び」というフレーズがぴったりなシチュエーションが、
デジャヴーのように押し寄せる。
この、似たような展開とドタバタのスケールアップ具合が、
どうやら批評家の不評を買ったようだ。
5つ星中、最低の1つ星をつけた英・ガーディアン紙は、
「パート2は、ほとんどの要素をショット単位でリメイクしているにすぎない」と酷評。
米・バラエティ誌も、「前作をバンコク色でコピーし直したもの」と、“焼き直し”を強調した。
しかも、二日酔いの朝の衝撃的な出来事が、
パート1の時の「ウィットに富んだもの」から
「犯罪臭の強い残虐なもの」になり、悪趣味だというのだ。
一方、数少ない支持派の批評家には、
「ハングオーバー! が好きなら、パート2も好きなはずだ。
なぜなら同じ映画だから!」とのコメントがある。
この同じという言葉には、笑いの度合いや質が同等、
あるいはそれ以上という意味合いが含まれていて、
シリーズ第2弾として評価に値するというものだ。
しかし注目すべきは、一般の観客が、批評家とは真逆の反応を示している点だ。
公開直後、米の有名映画レビュー・サイト「Rotten Tomatoes」での批評家の支持率は、
わずか30%ほどだったのに対し、観客のそれはなんと90%以上。
この奇妙な現象にネットメディアでは、「『ハングオーバー! 2』はなぜ批評家に嫌われるのか」や、
「批評家と観客の乖離現象をどう見る」といった記事が書かれた。
中には、「空前のヒット作の第2弾なのだから、公開直後支持が上がるのは当然。
勝負は公開2、3週後から始まる」と分析したものがあった。
その観点から、どちらの評価が正しいのかを得るなら、
公開4週目まで興収5位内にランクインしていたことが一つの答えではないだろうか。
「Rotten Tomatoes」の一般評価も、
公開から2ヶ月経った7月下旬ですら未だ批評家の倍近い。
しかもR指定でありながら、やはりシリーズものの『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』や
『カンフー・パンダ2』より上位に入っていたのだから、
『—国境を越える』が続編として観客から評価されているのは明らかだ。
マイク・タイソンが再登場する意味がないとか、
猿の扱いがどうとか、
笑えない理由を枚挙する批評家が多いが、
そもそもこの手の映画にモラルを求めるのが間違いだし、
マンネリズムも、この作品の笑いの大きな要素だと思う。
ここまできたら、似たようなシチュエーションで、
どこまで強烈な醜態に発展できるのか、
とことんシリーズを重ねて欲しくなる。(工藤静佳)