『美食家ダリのレストラン』ダリと天才シェフがもたらすアートな人情喜劇
むちゃな設定が実は心地よい⁉︎
そんな話、あるんです。
もしサルバトーレ・ダリと、レストラン「エル・ブジ」の天才シェフが同時代に活躍していたら。
それが大前提の映画だって覚えておいてね。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
ダリは誰もが知るシュルレアリスムの芸術家。
1904生まれで、1989年に生涯を終えた。
一方、世界で最も革新的と言われているレストラン「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリアは1962年生まれ。
「エル・ブジ」の料理長になったのは1987年。
そして、「エル・ブジ」があるのはスペインのカタルーニャ地方。
ダリが晩年を過ごしたのもカタルーニャ地方。
微妙にかすっていると言えばそうなのだけど。
ダリとフェラン・アドリアが出会ったなんて、ホントじゃないですから。
そんなの聞いたことない。
けど、もしこの2人の天才が同じ空気を吸って、同じ空間にいたらどうなる?っていうのがこの作品。
舞台は 1974年、フランコ政権末期のスペイン。
バルセロナでシェフをしていた主人公フェルナンドは、弟の不祥事で一緒に逃亡するハメに。
友人の伝手で辿り着いたのは、海辺の街カダケス。
そこは、サルバトーレ・ダリが住んでいる地中海に面した小さな漁村。
兄弟を迎え入れたのは、海洋生物学者のロラと、その父でレストランを経営しているジュールズ。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
このお父さんがとにかく破天荒。
ダリをめちゃくちゃ崇拝していて、店の内装はダリの芸術のマネで埋め尽くしている。
そしてダリに来て欲しいと、あの手この手を使ってアタックし続けるの。
その度に、ダリの妻ガラにピシャリと追いやられるのだけど。
フェルナンドは、そんなレストランで料理長をする事になったのね。
元々天才肌で仕事熱心だったフェルナンドは、ジュールズのレストランで独創的な料理を次々に発表していく。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
その料理というのが、実際「エル・ブジ」で提供されている逸品揃い。
例えば、「チキンカレーのアイス」とか、エア状のビーツやニンジンにココナッツミルクを添えた「キャロットエア」なんていう、エル・ブジの哲学を表現する料理という訳。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
ところで、この作品にでてくる主要なキャストが、とにかく人情味あふれる面々なの。
ジュールズなんて、激情型ですぐ感情がたかぶって沸騰しちゃうのだけど、最終的には訳あり兄弟をかばってあげるし。
ダリ家の運転手さんも、警察沙汰を起こしたジュールズたちを逃すのに一役買うとかね。
次はどんなドタバタが起きるのかしら、とワクワクしちゃう。
果たして、ジュールズの念願かなってダリはレストランを訪れるのか!?
それは映画を観てのお楽しみ。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
ゲイジュツvsゲイジュツの激突って感じの本作を思いついたのは、メガホンをとったダビッド・プジョル監督。
脚本も担当しているわ。
プジョル監督は、エル・ブジを追ったTVドキュメンタリーや、ダリに関するドキュメンタリー映画を世に送り出してきた実力派。
だからかしら、一見とんでも設定に思えるけど、決してふわふわした絵空事ではないストーリーとして納得できちゃう。
それぞれがしっかりしたアイデンティティをもつキャラクターたちになっていて、彼らの人生の1ページが味わえるって感じ。
©ESPERANDO A DALÍ A.I.E. 2022
地に足のついた、上質なエンターテインメントに仕上がってるわよ。
いつしかあなたもカオスが欲しくなること間違いなし。
タイトル『美食家ダリのレストラン』
原題:Esperando a Dali
2024年8月16日より、シネスイッチ銀座他、ロードショー
監督:脚本:ダビッド・プジョル
出演:ジョゼ・ガルシア 、イバン・マサゲ、クララ・ポンソ、ポル・ロペス
2022/スペイン/スペイン語、フランス語/カラー/115 分
配給:ファインフィルムズ/コムストック・グループ