『007/ ノー・タイム・トゥ・ダイ』 クレイグ版ボンドのダンディズム、ここに極めり!
ダニエル・クレイグによる最後のボンド作品『007 / N O TIME TO DIE』は、 間違いなく007シリーズの金字塔となるだろう。 クレイグ版ボンドの集大成であり、 彼のボンド1作目にあたる『007 / カジノロワイヤル』から続く 一連のサーガに対して、壮大なラストを奏でているからだ。
ダニエル・クレイグが6代目ジェームズ・ボンド役となった2005年。
映画界は、「青い瞳のボンドが帰ってきた」と彼の就任に期待を込めて歓迎した。
その期待は、良い意味で裏切られる。
なぜなら、常にボンドの残像であった、
初代映画版ボンドのショーン・コネリーのみならず、
過去の名だたるボンド俳優の007色を一変したからだ。
ダニエル・クレイグのボンドは、
その物語が”007”誕生シーン(『007 / カジノロワイヤル』)から描いていたから、
というストーリーラインを超え、
新時代のボンドの幕を華麗に、そして軽やかに開けてみせた。
15年間、彼がジェームズ・ボンドとして君臨していたのが何よりの証拠である。
そんなクレイグ版ボンドの魅力を最大限に昇華させているのが、
『カジノ〜』からの続く一連の作品の
クオリティの高さとストーリー展開にある。
ほとんどのボンド映画が1作完結だったのに対し、
クレイグ版のボンドは、彼が心に負った傷を2作目(『007 / 慰めの報酬』)に引き継ぎ、
3作目(『007 / スカイホール』)ではボンドの生い立ちを明かし、
4作目(『007 / スペクター』)で、そもそもの始まりから続く謎の”組織”と心の傷の決着に挑む。
そうして紡がれてきた糸が、今回の『007 / NO TIME TO DIE』で完結するのだ。
5作目の今作のストーリーはこうだ。
既にM I-6を辞職し、恋人と平穏な日々を過ごしていたボンド。
彼の前に旧知のC I A諜報部員が訪れる。
ボンドは彼の援助を引き受けたことから、
不気味な最新技術を操る正体不明の敵の陰謀を暴いていくこととなる、というもの。
そこへ、『カジノロワイヤル』や直前作の『スペクター』からの因縁が
巧みに絡んでくるのだ。
もちろん過去作品を知らずとも、今作1作品だけでも、
007の醍醐味をふんだんに盛り込んだ極上のスパイアクションとして楽しめる。
加えて、かつてないほどのミステリアスな展開になっていると言っていい。
本当の敵は一体どこにいるのか? といった謎解きと同時に、
裏切りと信頼、最愛と償いとが交差する人間ドラマまで孕んでいるのだ。
寡黙でタフな凄腕スパイ。
そんな007のイメージにプラスα、孤独な影とダンディズムを
ダニエル・クレイグは見事に表現し続けてきた。
本当にこれでクレイグ版ボンドが見納めかと思うと、
とてつもなく切ない。
しかし、観終わった瞬間、
これがダニエル・クレイグの出した007のダンディズムだったのだと
深く噛み締めることのできる作品だ。
1件のコメント
WordPress コメントの投稿者
こんにちは、これはコメントです。
コメントの承認、編集、削除を始めるにはダッシュボードの「コメント」画面にアクセスしてください。
コメントのアバターは「Gravatar」から取得されます。