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『選ばなかったみち』現実と妄想が重なった先にあるのは!? 娘と父の24時間ドラマ
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泣いた。
久しぶりに泣いたわ。
映画の筋書きは至って単純。
認知症の父親を歯医者と目医者へ、娘が介護しながら連れていく。
それだけなの。
けどね、その現実に、認知症の父親の妄想が2つ入り組んでくるの。
1つが、メキシコ出身の父親のアメリカに移住する前の昔話。
もう1つが、作家だった父親がギリシャへ執筆旅行へ行った時の話。
父親が過去に「選ばなかったみち」につながるストーリーたち。
つまり、親子は一緒の24時間を過ごしているんだけど、
パパ(父親)はずーっと現実から離れて過去の深層へと潜り込んじゃってて、
ちっとも交わらない。っていうジレンマが続くっていう構造。
で、どこが泣きポイントかって、
ずっと交わることのない親子の心は本当に通じ合うのか!?ってところよ。
それを見届けた時、込み上げてくるものがあるはずよ。きっと。
でも現実は過酷。
Water(水…)っていうから、コップに水汲んであげるでしょ。
飲むでしょ。
そしたらおしっこジャー。
そこまでもう認知症が進んじゃってるのね、父親は。
娘はそれを笑顔で、「ばっちいですね〜」って言いながら
ズボン履き替えさせたりして、なんとか医者に連れてくの。
本当は、娘自身すっごく大事な仕事の日だったんだけど、
パパに付き合ってあげちゃう。健気にね。
うつろで上の空の父親をハビエル・バルデムっていう
スペインを代表する演技派俳優さんが演じてる。
日本で言えばもう役所広司さんとか、
佐藤浩市さんなんかを彷彿とさせる、
顔の筋肉で演技しちゃう的な(!!)スゴい人。
で、パパのおしっこの処理もやりながら、
なんとか父親と心を通わせたいと頑張る娘を、
エル・ファニングさんが演じているわ。
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お姫様役とか、お嬢様役を想像しがちだけど、
今回は、壮絶・悶絶、絶望と希望を
ハビエル・バルデムとバチバチやり合ってる。
エル・ファニングさんの必死の形相は、
見ているだけでこっちが切なくなっちゃう。
私は、娘の立場に入り込んじゃったな。
現実世界では、娘が必死に心を通わせたいと父親の顔を覗き込むの。
わかりたくて、近づきたくて、父親に、なんとか娘はすがりついてく。
でも父親の視線はそぞろで、
娘の存在すらわかってんだかどうだか、って行動ばかり。
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例えばそれは、父親の過去の「選ばなかったみち」とも関連してる。
こともあろうかこのパパさん(父親)、
娘が幼い頃、うるさくて煩わしいからと、
母子を置いてギリシャに執筆旅行に出かけちゃってたわけ。
で、もし、そのまま母子を置き去りにしていたら?って妄想したりするのよ。
ひどい選択よね。
ギリシャの海を漂ってないで、
ちゃんと母子のところに戻りなさいよ!って突っ込みたくなっちゃう。
ところで、サリー・ポッター監督の映像はとても詩的よね。
薄くて儚い水彩の一筆を幾重にも重ねて、
重ねてって紡いでいく感じっていうのかな。
どのシーンもデリケートで繊細。
でも、決してふわふわしてないの。
人間の心の儚さを嘆いたと思ったら、
ドスンっと深い闇の部分を突きつけてきたり。
いつも、どの作品にもそういう匂いを感じるわね。
今回の「選ばなかったみち」もそう。
妄想と現実とをスルッと行き交うんだけど、
そのスマートさったら、美しい!の一言よ。
最終的に父親は何を選んで、誰に視線を注ぐのか。
あぁ、ハッピーエンドなの?と安心するかもしれないけれど、
サリー・ポッター監督はそんなに簡単に観客を許してくれない。
見終わった後、「え?そっちを選ぶの?」みたいな
ドッキリもあるから気をつけて。
2月25日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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